作曲家作品解説「もっと見つめて!~Stare More of My Heart~」
- 葬送派 人生
- 3月26日
- 読了時間: 7分
初めまして、人生回帰リーダー、鍵盤の髙橋昇嗣です。
いよいよ、リリースができた人生回帰初のシングル、「もっと見つめて!~Stare More of My Heart~」
僕は前バンド「人生葬送派」の頃から作曲と鍵盤としてこのメンバーにはお世話になってきたのですが、その際にも様々な界隈の方々に聞いていただき批評をいただいていました。後継バンドとして自分が請け負っていくことに対し「自分とは何者なのか」「自分の中の音楽のイデオロギーとは」ということをひたすら問われてきた。そんな一年であったと振り返ると感じています。
僕がリーダーとしてやりたいこと、人生葬送派との差異を熱弁する大変面倒くさい僕の自意識過剰な会議のようなモノを池袋の喫茶店でメンバーに聞いてもらったこともありましたね(笑)そんな僕のガンギまったバンドコンセプトをつらつら語り出すと長くなってしまいそうなので、また別の機会に。
そんなわけで人生回帰、結成初のシングルである、この曲。皆様聞いていただけましたでしょうか?僕は作曲と鍵盤(ピアノ)、バンドのアートワーク、とか、、、色々自分で作り、セルフプロデュースするような形でやっておりました。
いきなりですが、この曲は実はこれから出す楽曲の中、僕の作品の中で最も曖昧なコンセプトで仕上がってると言えます()
わざわざ書いてるくせに作曲家が作品の意味付けを怠ってどうする!と突っ込みたくなりますね、、、弁明させてください。いや、それがこの曲の面白さなのです….?
作曲経緯
この曲実は元曲があります。
僕が学生時代、大学でマーヴィン・ゲイの「What's Going On」のインストアレンジする課題がありまして、僕は原曲のメロディーを剥奪して原曲と似ても似つかないアレンジを書いたことがあります。
それが元曲となっているのです。一般的にソウルとジャンル分けされるこの曲、ベトナム戦争や公害、貧困をテーマに扱い、歌詞では「母」「父」「兄弟」である家族に争いこそが正義であるかをうったけかけるという社会的なコンセプトのある作品だと思います。
その訴えかけ、大衆煽動、自分がこれまでの世界の正義を疑う、アジテーションこそが重要な点であると思ったため、この曲の肝であるベースライン、コード進行を解体しても、自分なりのアジテーションをこのメロディで奏でられれば僕にとっては満足だった訳です。。。
そのアレンジ、自分自身でもかなり気に入っており、言いたいことを率直に音響化できたと思っていました。。。ですが!!ここで僕の自意識が僕に語りかけてくるのです。「せっかくいいアレンジできたのに、、」「てかもうメロさえ変えれば原曲の影がなくて僕の曲になれるのでは。。。?(ニチャア)」
嫌ですねぇ、、、作曲という行為はこの世でただ一人の自分がいること、なんらかの方法で"自分"をアイデンティファイする、せねばならぬ、自己中な側面があるのです。。
作曲をやり始めた人間の末路ですね。そんなわけで、マーヴィンのアジテーションを僕というフィルターで通したものを、一旦コンセプトを置いて、音響的に解体して、どうにか歌物で精通できるようジャンル化、構造化させたのがこの曲といえます。
今回歌物のジャンルとしてまとめ上げるのに題材としたのが"CityPop"です。
影響を受けた楽曲、アーティスト
Marvin Gaye「What's Going On」
DavidBenoit 「Freedom At Midnight」
ベースラインはこの曲参照というより、このジャンルの常套句的なところはありますが、ネイザンイーストの音色グルーヴ、David本人の最後のソロがとっても好きです、ライブバージョンもイイヨ。。。。。
山下達郎 「RIDE ON TIME」
「PAPER DOLL」
「WINDY LADY」 その他
泰葉 「Fly-day Chinatown」
本作で重要なCityPop要素で影響を受けてきた作品です。
達郎さんの楽曲は都会生まれの若者が海の外の文化、田舎の海や空想上の理想郷に想いを寄せる、どこか夢心地、
どこまでも飛んで行けそうな世界観と今の世の中に対する、ニヒズム、少しスカして、少し斜に構えた側面を対比させながら洗練されたアレンジング、無駄なものを一切許さない職人的側面で支えている楽曲だと思っています。(自論です)
泰葉さんはこの世の(いい意味での)俗っぽさのある歌詞を少し剽軽なとも言えるキャッチーなリフ、
強烈なメロでまとめ上げており、クールでスカしながらもそれだけでない一度聴いたら忘れられない個人のアーティストとしての"強さ"のある楽曲だと思います。(自論です)
楽曲構成
まあせっかくなんでオタッキーですけど構成も特徴的なので書こうと思います。
Intro-A-B-A-B-Bridge-サビ-solo-オチ-大サビ-outro
いやあなんとも変な構成ですよね、
前述した通り元曲の要素を用いつつ、Citypopとしてまとめ上げる作り方をしたためこの特徴的な構成になったといえます。
Intro~Bridgeまでは実は前述した元曲と多少省いたり変化はあるものの同じです、
サビ以降が歌物としてまとめ上げるためにサビをわかりやすく提示していますね。
サビはベースがスラップになり、この曲の骨格を作っているブラスがコントラストを作り出してまるで別世界になったようだと思います。
面白いのが、最初のサビと大サビがメロが実は違うこと、大サビの方は楽器ソロの間に転調が繰り返され、たどり着いた頃にはメロをそのまま転調すると音域が高くなりすぎてしまったんですよね。。。。
重要なリズムの要素を取って簡易版のメロのようにすることで、後ろのコーラス、最後のボーカルフェイクが対比的になり、結果良かったのではと個人的には思っています。
録音環境
猫が二匹います。マイク頑張って立てて、パソコンを譜面台に置いて、セルフで撮っています。なんだかんだピアノレコは一人で黙々とやることが多いですね。
この曲は打ち込みピアノではなくてうちのYamaha C3です。やっぱ打ち込みと生はどっちが上だ下だとかじゃなくて別の楽器ですよね。。。
そこのレコ環境が見えてしまいそうな空気感のあるピアノにしたい時はやっぱり生を選びたくなってしまいます。
白い鍵盤はKorg sv2です。可愛いですよね。
もちろん打ち込みも併用で色々混ぜて作ってます。
ドラムに関しても僕が最後までどうしても生でやりたくて、、、往年のシティポップのスタジオの見えそうな世界観を作り出そうとしました。
昨今打ち込みドラムが主流ですが、やはり僕は生が好きです。
打ち込みのために書いた曲は打ち込みで、生を想定して作った曲は生で撮って、音が足りなければトリガーを少し混ぜたり、最初の作曲段階から曲が求めいる世界観に沿わせるよう努力しました。
スネアは達郎さんの曲でもやっている曲があるのですが、かなり重心を低くして、ミュートをしっかりしています。弾け飛ぶようなスネアではなくて、ボトムの効いたドスッと落としてくれる音にしようとしました。
まとめ
作曲段階から作り出したいモノ、世界観を定めずに、すでにある自分のアレンジ楽曲、すでに存在している往年のCitypopというジャンルに制約を受けながら作ったこの楽曲。
元あるコンセプトを解体して、新しい見え方をつける発想としてはリミックスやDJ文化的なやり方と似た側面ももしかしたらあったのかもしれません。
しかしながら見返してみるとそこにはレトロ感やクラシカルな雰囲気があり、直接的に語りかけてくる田淵氏の歌詞も合わさり、後付けでありながら次第にイメージが固まってきたのだと思います。
人生回帰ではこれから月1曲ペースで他の曲もリリースしていく予定です。今回とはだいぶ毛色の異なる楽曲、コンセプトガチガチで組んで作っている曲色々ありますので、人生回帰の音楽における挑戦と実験をぜひ見守っていただけると幸いです。
最後にこの度リリース協力していただいたNATURAL FOUNDATION様ミックス、マスタリングしていただいた柏井日向様ありがとうございました。 今後とも人生回帰をよろしくお願いいたします!
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